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AI時代、ディレクションの仕事は「80%の生成」と「20%の仕上げ」に変わる
AIは敵じゃない。むしろ、ベテランの武器になる。
今日、仕事をしていて背筋が伸びるような、ちょっとした衝撃を受ける瞬間がありました。
この業界に30年身を置いてきましたが、仕事のやり方、いや商流そのものがガラリと変わる音が聞こえた気がしたのです。
備忘録も兼ねて、その気づきを書き留めておこうと思います。
きっかけは「ボックスティッシュを作りたい」という一言
今回の依頼は、お客様からのシンプルな相談でした。
「新年に配布するボックスティッシュを作りたい」
この一言が、思いがけない気づきの入口になりました。
僕らディレクターの従来フロー
通常、ディレクターの仕事はこう進みます。
ヒアリング → デザイナーに指示 → 数日待って初校 → お客様に提出 → 「イメージと違う」の一言で振り出しに戻る。
このすり合わせのラリーが何度も続く。
時間も気力も、大きく削られていきます。
試しにAIに指示を出してみたら、世界が変わった
ふと、最近話題のAI検索エンジン(Genspark)を使ってみました。
展開図のテンプレートと素材を読み込ませ、
「こんなイメージで作って」
と軽い気持ちで指示を出したところ、わずか数秒でモックが生成。
文字化けこそあるものの、レイアウトも配色も「叩き台」を超える完成度でした。
そのまま人に見せられるレベルだったんです。
まさかの“即決”。フローが一瞬で変わった
試しにそのAI生成案をお客様へ見せると、返ってきた言葉は驚くほどシンプルでした。
「あ、いいですね!まさにこのイメージです」
この瞬間、それまで当たり前だと思っていたプロセスが音を立てて崩れ、新しい働き方が立ち上がりました。
時間がかかっていたのは「デザインそのもの」ではない
従来フローで最も重かったのは、制作作業ではなく、
お客様の脳内イメージと実際のデザインをすり合わせる時間。
「なんか違う」「もう少しシュッと」
この曖昧なラリーこそが、現場を疲弊させる最大の要因でした。
AIでまず“完成形(80%)”を見せるという革命
今回のフローはこうです。
- AIで80%の完成形をその場で出す
- お客様と「これでいこう」と合意を取る
- 残りの20%を、プロのデザイナーが正確に仕上げる
この順番に変えただけで、すり合わせのズレがほぼゼロになりました。
お客様は安心。デザイナーは修正地獄から解放。
僕はスピーディに案件を前に進められる。
三者が同時にメリットを得る、“三方よし”の状態がここにあります。
営業スタイルも根底から変わる予感
僕はずっと「客先に足を運んでなんぼ」でやってきました。
ところが今日は一歩も外に出ず、AIと向き合い続けていました。
移動して“聞きに行く”時間が、
移動せずに“正解を用意する”時間に変わった。
「会おうと思えば、Zoomですぐ会える」
そう割り切れた瞬間、提案の質が一気に上がりました。
今日の提案は、これまでで一番お客様の核心に迫れた気がします。
「AIがあればディレクターはいらない?」その逆だった
よくある議論ですが、実際に触れてみると逆でした。
AIに的確な指示を出し、
上がってきたビジュアルが“イケているかどうか”を瞬時に判断し、
お客様の好みに合わせて調整する。
ここには、30年積み重ねた現場の感覚や目利きが必要です。
経験がある人ほど、AIを武器として使いこなせる。
むしろ、ベテランこそAI時代の主役になれるのではないか。
そんな感覚すらありました。
視界が一気に開けた瞬間
「あとは原稿に合わせて整えるだけだね」
そう思えた瞬間の開放感。
あの視界の開ける感覚は、久しぶりのものでした。
一度このフローを体験してしまったら、もう昔のやり方には戻れません。
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おわりに
AIは仕事を奪うのではなく、
“人にしかできない領域”をより際立たせてくれる存在なのかもしれません。
これからのディレクションの仕事は、
AIと共に「より速く、より深く」価値を届けていく時代になる。
そんな未来の入口に、今日立った気がしています。

